むやみに頑張らないこと | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

 

誰かに仕事をお願いするときに、「頑張ります」という返事をされるのは好きではない。頑張らないとできないのかと思うと、不安だからだ。できれば、頑張らずに涼しい顔で遂行してくれる人を探したい。


頑張るための余力は何かトラブルがあったときなど、いざという時にとっておいて欲しいのである。もし、依頼した「100 の仕事」に対して、110、120 の結果を出すために頑張ってくれるというのなら嬉しいが、それなら黙って頑張って欲しい。


「頑張ります」という言葉を使うとしたら、「100 の仕事は無理ですが、なるべく 100 に近づけるように頑張ります」といった文脈になるだろう。「95 までの完了は約束しますが、98 を目標に頑張ります」など、具体的な達成内容まで明確にできれば理想的だ。



「あいつはいつも頑張っている」という言葉は、「100以上」を目指して頑張っているのなら褒め言葉である(「仲間の仕事まで手伝っている」とか「自己のスキルアップに取り組んでいる」とか)。しかし、常に 100 を目指していつも頑張っているのだとすると、その人は常にトラブルを抱えているか、スケジュールの立て方がおかしいのだろう。


いつも頑張っていると、「頑張っている状態」を基準にしてスケジュールを立てるようになってしまう。普通は1週間かかる仕事でも、3日でできると自分自身が勘違いしてしまっている。実際、残業などして頑張ってやるので、何事もなければ3日でできるのだろう。しかし、そのような「もともと頑張る前提」のスケジュールでは、それ以上頑張れる余地がないため、トラブルが起きるとどうにもならなくなる。


これは個人だけでなく、組織でも同じだ。スタッフがいつも残業したり休日出勤したりして「慢性的に頑張っている組織」は、無理な仕事をどんどん受けてしまう危険性がある。そのうちのいくつかはトラブルが原因で、納期が守れなかったり、品質を落としたりしてしまうだろう。



悪いことに、いつも頑張っている人が、頑張らなくなると、手を抜いているように思われやすい(普通の状態に戻っただけなのに)。それが嫌で、ずっと頑張り続けることになるという悪循環。


そんなことにならないためには、「とりあえず頑張ろう」と考えるのではなく、「頑張らずに仕事をするにはどうすればよいか」、「頑張らずにできる範囲はどこまでか」といったことを考える方がよい。


もちろん、トラブルが起こったときなど、本当に頑張るべき時に頑張るのは当然である。そのためにも、「頑張るための余力」を残したスケジュールを立てるようにしたいものである。





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